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2022.2.28[MON]

【マッチレポート】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第7節

【マッチレポート】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第7節

NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第7節

2月26日、リーグワン第7節。静岡ブルーレヴズは前節、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)に悔しい負け方をした汚名返上を期して関東でのビジター3連戦の初戦となるNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)戦に臨んだ。

 

前節までの順位は、ブルーレヴズが10位(勝点5)に対し、GR東葛は9位(同10)。GR東葛は実際に戦った試合では0勝3敗といまだ未勝利だが、国内外から大型補強もし、油断はまったくできない相手だ。トップリーグ時代の昨季は秩父宮ラグビー場で対戦し、ヤマハ発動機ジュビロが勝利したが59-31という、スコア以上に厳しい試合だった。

 

ブルーレヴズは前節の横浜E戦から先発3人を変更した。

前節はリザーブだったLO 桑野詠真選手が2試合ぶりに先発に復帰し、前節LOに入った舟橋諒将選手がFLへ。そして、SHにはここまで背番号9を守ってきたベテラン矢富勇毅選手に代わって田上稔選手が、CTB13には同じく初戦から連続先発を続けてきた鹿尾貫太選手に代わりリザーブから石塚弘章選手が繰り上がった。

 

注目されたのは田上選手だ。佐賀工 - 帝京大を経てブルーレヴズの前身・ヤマハ発動機ジュビロに加入して3年目。佐賀工時代は高校日本代表に選ばれ、帝京大では1年生時から対抗戦で活躍したキャリアを持ち、前節の横浜E戦でリザーブからリーグワンデビューを飾り、今節は初の先発を勝ち取った。リザーブにはHO 日野剛志選手、SH 矢富(勇)選手、CTB 鹿尾選手の日本代表経験を持つベテラン組も控える万全の体制で、ブルーレヴズはビジターの地・柏の葉公園総合競技場へ乗り込んだ。柏で戦うのはトップリーグ時代の2006年12月、2008年10月以来で13年4カ月ぶり。過去2回は2点差、14点差でジュビロが敗れている。新生ブルーレヴズが歴史に1ページを刻むチャンスだ。

試合はブルーレヴズのキックオフで始まった。

相手ノックオンをCTB ヴィリアミ・タヒトゥア選手が掴み、いきなり敵陣アタックのチャンス。PKを得るとゴール前のラインアウトに持ち込んで攻撃開始。初先発のSH 田上選手がリズミカルにパスをさばき、ブルーレヴズが次々とアタックを繰り出す。苦しくなったGR東葛がブレイクダウンで反則を犯すと再びラインアウトに持ち込み、CTB タヒトゥア選手、FL イシ・ナイサラニ選手がグイグイと相手ゴールに食い込み、ディフェンスを集めておいて右へパス。FB 奥村翔選手がゴールライン目前まで持ち込み、相手タックルを受けながら前に出たところへ素早く駆けつけたのが南アフリカ代表ブルーレヴズの至宝NO8 クワッガ・スミス選手。ボールを拾い上げるやいなやインゴールへ転がり込み先制トライをあげる。キックオフから3分40秒の先制劇、最高のスタートだ。

 

11分にはFB 奥村選手、SO 清原祥選手が右サイドを突破し、左へFB 奥村選手 - LO 大戸裕矢キャプテン - PR 西村颯平選手がボールをつなぎ、CTB タヒトゥア選手のゲインからFL 舟橋選手がゴールラインに迫る。ここは相手WTBのバッキングアップで惜しくもタッチに出されたが、相手に息もつかせぬ怒濤の連続攻撃。この試合にかけるブルーレヴズの気迫がGR東葛を飲み込んだ。

 

とはいえ、地元・柏の葉で戦うGR東葛も意地を見せ、微妙な判定もあったが、14分、18分と連続トライで逆転する。

 

25分には左ラインアウトからの6次攻撃でボールを持ったブルーレヴズのCTB タヒトゥア選手が相手タックラー2人を突き抜けてトライ。

12-10と逆転するが、GR東葛は29分にトライを取り返して12-15。さらに33分、GR東葛が自陣から蹴ったキックがラッキーバウンドとなって相手WTBの腕へすっぽり入り、コーナーに向かってダイブする。試合の流れを決定づけるトライか。

 

その瞬間だった。フルスピードで青い影が矢のように飛んできて、インゴールに迫ったグリーンのジャージーに突き刺さった。背番号15、FB 奥村選手が猛然とタックルしたのだ。レフリーはいったんトライを宣告したものの、TMOを要請。何度も映像を見直した末、相手のグラウンディングの一瞬前にスパイクがタッチの白線を踏んでいたことが確認された。みごとなトライセービングタックル。

これが試合の流れを変えた。

39分、攻め返したブルーレヴズは、FL ナイサラニ選手、CTB タヒトゥア選手の突破からCTB 石塚選手が左隅へトライ。19-15と逆転して前半を終えると、後半もキックオフから敵陣侵入に成功。ここからのアタックで相手にイエローカードが出て数的優位を得る。このチャンスにブルーレヴズはラインアウトモールからHO 平川隼也選手がトライ。前節、数的優位の時間にトライを奪えなかった呪縛を払拭すると、10分にはSH 田上選手、NO8 スミス選手、PR 西村選手が次々とオフロードパスをつなぎ、FB 奥村選手の飛ばしパスがWTB マロ・ツイタマ選手へ。打ち切りとなったトップリーグ2019-2020シーズンから3季連続のトライ王を目指すWTB ツイタマ選手は右手でハンドオフしながら左手で掴んだボールを豪快にたたきつける今季4本目のトライ。31-15までリードを広げる。この時点でトライ数は5-2。トライ数で3差をつけ、ボーナスポイントも含む勝点5の獲得が見えた。

しかし地元で戦うGR東葛もさすがにしぶとい。

21分、自陣からリズミカルにパスをつなぐ。戻ったFB 奥村選手が相手のパスに反応して出した手にボールが当たって落ちると、ペナルティートライとイエローカード判定が下される。31-22とGR東葛が追い上げる。

 

いったん確保したかに見えたボーナスポイントが消滅したブルーレヴズはトライを取り返したいところだが、まずは1人少ない10分間をしのぐことが先決だ。ブルーレヴズはここでLO 三浦駿平選手、SH 矢富勇毅選手、CTB 鹿尾貫太選手がピッチへ。フレッシュレッグスの投入で運動量をあげたブルーレヴズは、自陣ゴール前まで攻め込まれながら懸命のタックルを繰り返し、相手の不用意なプレーもあり数的劣勢の10分間を何とか無失点でしのいだ。

 

そして33分、奥村選手がピッチに戻り、ピッチ上は再び15人対15人に。

ボーナスポイント再獲得に向けてブルーレヴズが相手陣に攻め込む。途中出場のSH 矢富選手、CTB 鹿尾選手が冷静に時間とエリアを計算しながらボールを動かす。しかし、キックが相手の手に入ってカウンターアタックからそのままトライを献上してしまう。ボーナスポイント再獲得のチャンスから一転、31-27の4点差に。しかし、決まれば2点差になるという相手のコンバージョンキックにプレッシャーに走ったFB 奥村選手がキックをはたき落とし、相手の2点を阻止する。PGでは逆転できない4点差を残すビッグプレーだった。

16点差から4点差に迫られ、残りは3分。ギリギリのピンチになって、ヤマハ発動機ジュビロ時代から青いジャージーに刻まれてきたDNAが姿を現す。相手陣深くに入ってPKを得ると、ブルーレヴズはPGで7点差にする(=安全圏に逃げ込む)よりも、自分たちの強みであるスクラムで時間を消費する(=勝ちを確実にする)ことを選んだ。PKで選択したスクラムでまたPKを得ると再びスクラム。もう一度スクラムを得ると、大戸主将は残りの秒数を確認した上でショットを選択。フルタイムのホーンを確認した上で奥村選手がキックを蹴り込み、34-27の7点差にして試合を終えた。

 

1月30日(日)にヤマハスタジアムで迎えた今季初戦でNTTドコモレッドハリケーンズ大阪を破って以来、丸1カ月ぶりの勝利。振り返れば、今シーズンは戦えるのかと不安に包まれながら迎えた初戦に勝利を飾り、自信を掴みかけた。だがその勢いに乗ることができずに重ねた2つの敗戦、苦しんだ1カ月。それでも、苦い敗戦は成長の薬だった。絶対に負けられないGR東葛戦にブルーレヴズはギリギリの試合の末に勝利を掴んだ。

 

掴みかけた自信、薄れかけた自信、しかし土壇場の試合に勝ち切れた自信。

このプロセス、この勝利はきっと、ブルーレヴズが上位に勝ち上がっていくために必要な道だったのだ。

 

次節は3月5日(土)、相手は今節首位に躍り出たクボタスピアーズ船橋・東京ベイだ。ブルーレヴズにとって、真のチャレンジロードが始まる。