NEWSニュース

2022.3.15[TUE]

【マッチレポート】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第9節

【マッチレポート】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第9節

NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第9節

3月13日、静岡ブルーレヴズはリーグワン後半スタートの第9節を迎えた。

ここまでの成績は2勝6敗の10位。

 

9節の相手はNTTコミュニケ-ションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(以下、SA浦安)。ここまでの勝敗は2勝6敗とブルーレヴズと同じ。ボーナスポイントの関係でリーグワン12チーム中、最下位に沈んでいるが、これもブルーレヴズと同様、コロナ感染で3つの不戦敗があったため。開幕戦ではコベルコ神戸スティーラーズ、第7節には東芝ブレイブルーパス東京という実力チームを、ともに1点差で破っている。ブルーレヴズにとっては強敵であると同時に、同じような苦しい時間を乗り越えてここまで戦ってきている仲間でもある。

 

試合会場は、SA浦安のホームスタジアム・江東区夢の島競技場。ライバルに心からのリスペクトを抱きつつ、だが絶対に負けられない一戦に、ブルーレヴズは臨んだ。

前節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦からの先発メンバー変更は3人。右PRには、開幕戦となったNTTドコモレッドハリケーンズ大阪戦で負傷退場した伊藤平一郎選手が復活。前節はリザーブから出場して好プレーを連発したルーキーFL 庄司拓馬選手がマルジーン・イラウア選手と入れ替わって先発入り。そしてWTBには第5節のブレイブルーパス東京戦で負傷退場して以来のキーガン・ファリア選手が伊東力選手に代わって入った。

前節は24-30で敗れたが、リーグワンの首位を走る好調、東京ベイを相手にチャレンジングなラグビーで食い下がり、敗れたとは言え6点差に迫って、BP1を勝ち取った。その試合をポジティブに捉え、今節こそ必勝の決意をもって試合に挑んだ。

試合はブルーレヴズのキックオフで始まった。今季初めて、赤のセカンドジャージーで登場したブルーレヴズは、試合のスタートから猛チャージに出た。SA浦安のアタックに激しい出足でプレッシャーをかけ、相手がキックを蹴ってくれば全員で戻り、そこから猛然とボールを動かした。

 

SO サム・グリーン選手からパスがCTB ヴィリアミ・タヒトゥア選手にわたり、さらにWTB ファリア選手が前進したところへFB 奥村翔選手が走り込む。さらに外に待ち構えるWTB 中井健人選手へ鮮やかなパスが通る。いったんボールを奪われても、相手のキックに全員で戻って再びカウンターアタック。激しく前に出続ける。ひとつひとつのコンタクト、ブレイクダウンに熱がこもる。

ブルーレヴズのキックオフから始まったゲームスタートのシリーズは3分近くまで継続。最後は小さなファンブルで相手ボールのスクラムとなったが、ベテランのHO 日野剛志選手、PR 伊藤平一郎選手が戻ってきたレヴズはこのスクラムを猛然と押す。相手が辛うじてボールを出したところへ、今度はWTB ファリア選手が猛タックルを見舞ってノックオンを奪う。

そして迎えた7分だ。相手陣右22m線のラインアウトからモールを組むとみせかけて、FL 庄司選手が持ち出し、SH 田上選手、さらにSO グリーン選手へフラットなパスが渡ったところで、狭いスペースに走り込んだWTB ファリア選手にリターンパスが通り、鮮やかに抜け出し先制トライを決める。キックオフからすべての時間を支配しての先制劇。最高のスタートだ。

 

さらに次のキックオフで相手の反則からPK を得るとすぐ相手陣に攻め込み、11分、タヒトゥア選手の突進を起点に奥村選手がPGを蹴り込み、10-0とリードを広げる。

 

試合はそこからSA浦安の時間帯に入る。スコットランド代表SH グレイグ・レイドロー選手、オーストラリア代表FB イズラエル・フォラウ選手ら世界的なスター選手を擁するSA浦安が多彩なオプションでブルーレヴズの陣内に攻め込む。しかしブルーレヴズのディフェンスは崩れない。赤いジャージーは鋭い出足と低いタックル、素早いブレイクダウンで相手アタックを止め続けるのだ。17分にはLO 大戸裕矢キャプテンのタックルとHO 日野選手のジャッカルでPKを奪う。18分には巧みな突破をみせた相手、SHレイドロー選手にNO8 イシ・ナイサラニ選手が鋭いリアクションですぐさま追いついて倒す。23分、再びCTB タヒトゥア選手とFB 奥村選手のキャリーで攻め込み、26分にはFB 奥村選手がPGを加え13-0。

 

SA浦安はその後もフェイズを重ねてブルーレヴズを攻め立てるが、赤いジャージーの結束は崩れなかった。12フェイズに渡るアタックを止め続ける。32分に1PGを返されたものの、次のキックオフから相手選手がリターンを駆けるとブルーレヴズのPR 河田和大選手が突き刺さって倒す。前半の40分間は13-3とブルーレヴズがリードした。

しかし後半は、試合再開のキックオフからSA浦安が猛然とアタック。ノーホイッスルでトライとゴールを奪われ10-13。その過程でブルーレヴズはWTB ファリア選手が危険なプレーでイエローカードを受けピッチを出る。後半早々、3点差に迫られて、1人少ない10分間。ブルーレヴズに試練の時間が訪れた。

 

苦しい時間に頼りになったのが、ヤマハ発動機ジュビロ時代からの揺るがぬチームカルチャー、スクラムだった。45分、ハーフウェー付近のスクラムでコラプシングを奪う。48分には自陣ゴール前まで攻め込まれながら、マイボールのスクラムを得るとそこを押し込んでPKを獲得する。SA浦安も交替選手を投入して攻撃を加速させるが、1人少ない10分間をブルーレヴズは無失点で耐えた。54分、シンビンから戻ったWTB ファリア選手は、不在の時間を償うようにSA浦安のアタックをゴール前ディフェンスで突き刺さって止める。自陣ゴール前のピンチを15フェイズまで守り抜くと、最後はトライラインに迫った相手選手の抱えたボールにCTB タヒトゥア選手がタックルしてゴールライン真上でノックオンさせるのだ。

 

だが試練は続いた。ブルーレヴズのゴール前で組まれたスクラムで、ブルーレヴズは立て続けにコラプシングの反則を取られ、PR 伊藤選手がイエローカードを受けてしまうのだ。いったんコールされたペナルティートライは取り消されたが、13-10とわずか3点のリードで再び1人少ない10分間、しかも自陣ゴール前の相手ボールスクラム。相手は勢いづいている。絶体絶命のピンチ。

 

だがそんなピンチを救ったのが、伊藤選手の代わりに右PRに急遽入った郭玟慶選手だ。台湾出身、摂南大から昨年4月に加わった180cm、120kgのチーム最重量PRは、自陣ゴール前で組まれたスクラムを一歩も引かずに耐え、逆に押し込む。SA浦安がボールを出したところへFL クワッガ・スミス選手、桑野詠真選手、大戸裕矢選手らが次々と襲いかかり、倒れ込みの反則を勝ち取る。さらにタッチキックで陣地を進めたラインアウトで相手ノックオンがあると、再び組まれたスクラムを赤いブルーレヴズが組み勝ち、再びコラプシングを獲得。1人少なくなっても影響を受けない8人対8人のスクラム勝負で、ブルーレヴズの逞しきFWは、自陣ゴール前からハーフウェーまで陣地を戻して見せた。

 

これで流れは完全にブルーレヴズに来た。69分、相手キックがダイレクトになったラインアウトから、HO 日野選手の突破を起点にアタック。ピッチに入ったばかりのベテランSH 矢富勇毅選手が緩急自在のペースコントロールでボールを動かし、5つのフェイズを重ねてパスを受けたCTB 鹿尾貫太選手が、相手タックラーの隙間を突いて右隅に飛び込んだ。14人対15人という数的劣勢の中で逆にリードを広げるトライをあげると、右隅からのコンバージョンをFB 奥村選手が見事に蹴り込む。残り10分を切って20-10。

 

そして迎えたファイナルミニッツ。こうなれば逃げ切りだ。リードを保つためにはリスクを減らし、ボールをキープし続けるのがセオリーだ……だがピッチに立つブルーレヴズの15人に、そんな守りのイメージはなかった。自陣ゴール前に攻めこまれたスクラムから敢然とアタック。フェイズを重ねて相手ディフェンスが内に寄れば、SO グリーン選手がキックも使ってアタックを狙う。そして78分だ。自陣22m線のスクラムから再びボールを動かし、入ったばかりのWTB マロ・ツイタマ選手がゲイン。そしてフェイズを重ねたところでSO グリーン選手の突破からCTB 鹿尾選手、WTB ファリア選手とつなぎ、相手タックルを受けながらオフロードパスを出す。

 

そこに走り込んだのは、LO 舟橋諒将選手だった。80分間以上にわたってスクラムを押し続け、ブレイクダウンに体を張り続けた背番号5が、相手バックスの快足ランナーたちを振り切って歓喜のゴールラインに106kgの巨体を躍らせる。そして仕上げはFB 奥村選手だ。この日100%キックを決めてきたスナイパーは、5本目のキックも鮮やかに成功。27-10と突き放したところで、レフェリーのノーサイドの笛が鳴った。

厳しい試合だった。2度にわたって数的劣勢の時間を強いられた。自陣ゴール前に何度も攻め込まれ、武器のスクラムで逆に反則を奪われる場面もあった。だがセカンドジャージーに身を包んだ赤いブルーレヴズはどれだけ逆境にあってもひるまず、チャレンジし続けた。ベテランの力に加え、成長を続ける若手が試合を重ねるごとにパフォーマンスを高め、パフォーマンスのクオリティを高めている。

 

9節を戦い終えて、ブルーレヴズは3勝6敗、勝点14で前節までの10位から、今季初めての1桁順位「9位」に上がった。関東でのビジターゲーム3連戦を2勝1敗と勝ち越しで終え、次節からは地元・静岡での3連戦。静岡スタジアム・エコパにコベルコ神戸スティーラーズ、日本平スタジアムに埼玉パナソニックワイルドナイツ、ヤマハスタジアムにリコーブラックラムズ東京を迎える。

 

厳しい戦いを乗り越え、逞しくなったブルーレヴズの姿を、静岡のファンに見てもらおう。たくさんのファンに、スタジアムへ来てもらおう。ブルーレヴズは、今週もまた、強くなってピッチに出てくるに違いない