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2022.3.29[TUE]

【マッチレポート】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第11節

【マッチレポート】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第11節

静岡をスポーツでひとつに R&Oリハビリ病院グループ presents All for Shizuoka マッチ

前夜の激しい雨は夜明けとともに止んだ。キックオフ前には日差しがスタジアムを包んだ。

 

前節はコロナ陽性者が出たことで開幕直後の3節に続く中止。関東でのビジター3連戦を2勝1敗と勝ち越し、チーム状態が上向いていたところでのホストゲーム。それもコベルコ神戸スティーラーズという素晴らしい相手を迎えて戦うチャンスが消えたのは無念だった。だが、ブルーレヴズの誰も、そんなアクシデントを引きずりはしなかった。

 

迎える第11節の相手は埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)。トップリーグのラストシーズンとなった昨季のチャンピオンであり、今季は開幕からの2節こそコロナ陽性者が出たために不戦敗となり、ここまでの公式成績は8勝2敗だが、実際に戦った試合では8戦全勝。現在首位の東京サンゴリアスも破っている。日本代表だけでなくオーストラリアやウェールズ代表がひしめく、リーグワン現在の最強チームだ。

付け加えれば、リーグワンの理念たる地域密着とラグビーの事業化を先頭に立って進めている点でも格好のライバル。チャレンジするにはこれ以上ない相手だ。

 

そんな、ブルーレヴズにとって特別な相手との対戦会場には、特別なスタジアムが用意された。Jリーグ清水エスパルスの本拠地・アイスタことIAIスタジアム日本平。Jリーグのベストピッチ賞を9度も受賞したという上質の芝と、富士山と駿河湾を望める風景に恵まれたスタジアム。トップリーグ時代のヤマハ発動機ジュビロもここで試合をする機会はなかった。従来のラグビーの枠を超え、地域の枠を超えて「オール静岡」のシンボルを目指すブルーレヴズにとって、ここ日本平での試合は大きなエポックだった。このスタジアムでの初めての試合の相手が埼玉WKだったこともまた必然だった。そしてきっと、天気予報が外れ、晴天に恵まれ、咲いたばかりの桜と芽吹き始めたばかりの新緑を愛でながらスタジアムを目指せたことも。

この試合に、ブルーレヴズは2週間前の前節、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ戦とまったく同じメンバーを並べた。1番の河田和大選手から15番の奥村翔選手までの15人だけではない。リザーブの8人も全員同じ顔ぶれが並んだ。これは今季初めてのこと。

 

14時30分、試合は埼玉WKのキックオフで始まった。ブルーレヴズはSH 田上稔選手が浅めのボックスキックを蹴り、埼玉WKにプレッシャーをかけてボールを奪い、PKを獲得して相手陣進入に成功する。埼玉WKがさすがのディフェンスでボールを奪っても、そこからのキックに猛プレッシャーでチャージをかける。立ち上がりからブルーレヴズの闘志が王者を飲み込んだ。

 

しかし、試合巧者の埼玉WKはスクラムで得たPKからブルーレヴズ陣に攻め込み、13分にPGで先制。しかし今のブルーレヴズはひとつやふたつの失点では揺るがない自信を持っている。

 

16分、自陣ゴール前に攻め込まれたピンチで、ブルーレヴズはNo8 イシ・ナイサラニ選手のタックルとPR 伊藤平一郎選手のジャッカルでターンオーバー、そして、WTB キーガン・ファリア選手がキックでクリア。直後、再び埼玉WKが攻め込んでくると、ファリア選手のタックルとFL 庄司拓馬選手のジャッカルでターンオーバー。相手のアタックに対してタックルする選手とジャッカルする選手が絶妙の呼吸でボールにからみ、奪う。さらに20分には自陣22m線の相手ボールスクラムをPR 河田和大選手に力を結集して押し込みコラプシングのPKを奪った。FWだけでなくBKの選手も駆け寄り、FWのビッグプレーをねぎらう。

 

これで流れを引き寄せたブルーレヴズは、ラインアウトからSH 田上選手が相手ギャップを見て前進。次のキックがチャージされても相手の処理にプレッシャーをかけてハンドリングエラーを誘う。SH 田上選手が素早いさばきでリズムを作り、SO サム・グリーン選手が相手ディフェンスのギャップを見つけては果敢にチャレンジしてゲインを獲得する。23分のチャンスはPR 伊藤選手からWTB 中井健人選手へのパスが通らずチャンスを逸したかに見えたが、そのくらいでブルーレヴズは気落ちしない。

 

27分、ハーフウェー付近右中間のスクラムからCTB ヴィリアミ・タヒトゥア選手をはさんでSO グリーン選手がビッグゲイン。パスを受けたWTB 中井選手が相手ゴールライン手前まで持ち込み、ラックからパスを受けたNO.8 ナイサラニ選手が左中間にトライを決め5-3と逆転する。

さらに直後の32分、相手キックオフを蹴り返したWTB ファリア選手のタッチキックで相手陣22m線付近まで陣地を戻すと、相手ラインアウトのこぼれ球を掴んだHO 日野剛志選手、FL クワッガ・スミス選手、さらにNO.8 ナイサラニ選手が前進したラックから再びボールを持ったSO グリーン選手が右へビッグゲイン。ゴール寸前で倒されるが、素早くタックルポイントに走り込んだSH 田上選手から右隅のLO 大戸裕矢キャプテンにパスが通り、右隅にボールを押さえた。右隅からの難しいコンバージョンをFB 奥村翔選手が鮮やかに蹴り込む。今季のホームゲーム最多3,784人が集まったアイスタのスタンドが沸いた。

 

さらにブルーレヴズの攻勢は続く。35分、WTB 中井選手の好判断のキックから相手陣22m線付近のマイボールラインアウトのチャンス。しかしブルーレヴズはボールを獲得しながら、モールを組もうとしたところで呼吸があわずノックオンしてしまう。得点をたたみかけたい場面での痛恨のミス。

 

だがブルーレヴズFWの8人は自分たちのミスを自分たちで取り返す。相手ボールのスクラムを3度組み直した末に、PR 伊藤選手を先頭にスクラムを押し込みコラプシングのPKを獲得。39分、左中間約35mのPGをFB 奥村選手が慎重に蹴り、15-3までリードを広げて折り返す。

2018年トップリーグを最後に負け知らずの進撃を続ける埼玉WKを前半ノートライに封じる戦いで12点をリードしたブルーレヴズ。しかし埼玉WKもさすがディフェンディングチャンピオン。ブルーレヴズのキックオフから攻撃を継続し、ノーホイッスルでトライ。46分にはPGも決め、得点は15-13。ブルーレヴズのリードはあっというまにわずか2点まで縮められてしまう。

 

しかし、今のブルーレヴズは崩れない。

49分、自陣22m線付近に攻め込まれながら、CTB 鹿尾貫太選手のタックルと、NO.8 ナイサラニ選手とFLスミス選手のジャッカルでPKを獲得してピンチを脱出し、相手陣22m線へ。

このチャンスにブルーレヴズはSH 田上選手に替えて矢富勇毅選手を投入。相手陣のスクラムからの展開でWTB 中井選手がゴール前に迫った。だが相手タックルを受けたあとのオフロードパスが通らず、トライチャンスは実らず。後半に入り、埼玉WKのディフェンスも精度とコンビネーションを上げてきた。

 

そして57分、相手選手にイエローカードが出され、ブルーレヴズは10分間の数的優位を得る。だがこの数的劣勢の中で埼玉WKはPKを獲得してPGを決め15-16と逆転する。しかしブルーレヴズも負けてはいない。24分、相手ボールのブレイクダウンに粘り強くプレッシャーをかけ、LO 大戸キャプテンのカウンターラックで相手ノックオンを誘う。

 

勝負の時間だ。

スクラムからフェイズを重ねたブルーレヴズはFB 奥村選手、SO グリーン選手の突破で相手ゴール前に攻め込み、HO 日野選手、WTB マロ・ツイタマ選手がトライラインに迫る。埼玉WKもギリギリで止め続けるが、28分、スミス選手が分厚い壁を突き破り、ゴールポスト左にトライ。SO グリーン選手のコンバージョンも決まり22-16と再びリードを奪う。

試合はいよいよ分からなくなった。

31分には攻め込んだ埼玉WKがPGを決め22-19の3点差に迫る。ブルーレヴズも34分、攻め込んでPKを得るとショットを選択し、SO グリーン選手がPGを決め25-19と再び6点差。トライだけでは追いつけないが、コンバージョンが決まればひっくり返るというギリギリの点差で、ゲームはラスト5分へ。息もつけない展開。

 

最後の勝負で鍵になったのはスクラムだった。

75分、相手が持ち込んだラックでレヴズFWがプレッシャーをかけてノックオンを誘い、自陣22m線でマイボールスクラムを獲得する。しかしそのスクラムでPKを獲得したのは埼玉WKだった。ラインアウトからモールで前進をブルーレヴズは必死で耐えるが、イエローカードを出されてしまう。そして数的不利で迎えたラストプレー、埼玉WKはラインアウトモールからゴールポスト側へじわじわと攻撃をスライドさせ、残り0分でトライ。1点差に迫ると、タイムアップのホーンが鳴ってからのゴールキックを成功させた。

 

25-26。ブルーレヴズは79分、いや80分のホーンが鳴るまでリードしながら、ロスタイムのキックで逆転され、ノーサイドの笛が鳴った。

昨季のチャンピオンにして、今季は実戦全勝の埼玉WKを相手に最大12点のリードを奪ったことを、そしてIAIスタジアム日本平で迎えた最初の試合ということを思えば、絶対に勝ちたい試合だった。十分に勝てる試合だった。そこで勝てなかったのも事実だが、胸を張れる試合をしたのも確かだ。

 

堀川隆延監督は言った。

「宮崎合宿では50-0で負けた相手にきょうは1点差。負けはしたけれど、選手たちは新たなレヴズスタイルを築き始め、成長していることを証明してくれた」

 

大戸裕矢キャプテンは言った。

「勝てた試合だったとは言いたくない。届かなかった1点の重さをこれから1週間、しっかり考えて、次のリコーブラックラムズ東京戦までに修正して、そのあと勝ち進んでいきたい。選手が伸びている実感はありますから」

 

11節でリーグワンは中盤戦の交流戦を終え、ブルーレヴズは現在9位。

 

だが、リーグワンのディビジョン1をリードする「3強」の2つ、東京ベイと埼玉WKの両方から7点差以内での負けのボーナスポイントを奪い、ブルーレヴズが試合を重ねるごとに成長し、戦闘能力を高めていることは明らかだ。そして、レヴズスタイルが確実に確固たるものに近づいていることはこの日戦った選手たちが証明してくれた。

IAIスタジアム日本平での記念すべき試合。大雨の予報は外れた。試合の途中からは雲が消え、日本一の霊峰・富士山が顔をみせた。きっとこれは吉兆だ。

止まない雨はない。消えない雲はない。勝てない試合はない。

 

レヴ二スタの皆さん、BYE WEEKを挟んでエナジーをチャージしたら、もう一度、シーズンの最後まで一緒に戦い続けましょう!